入管法に詳しい某行政書士の雑記ブログ

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外国人の在留資格とは:そもそも在留資格って何?ビザ=在留資格ではない?

外国人からの相談では、「ビザが切れそうなので更新がしたい」「就労できるビザに変更したい」ということをよく聞きます。

一般的にはビザが在留資格の意味で使われてしまっているのですが、実は、ビザは在留資格とは異なるものであることはご存じでしょうか?

 

今回は、外国人の在留資格について解説します。

 

1. そもそも外国人とは

 外国人とは、日本国籍を有しない者のこと(入管法2条2項)を意味し、無国籍者を含みます。

 日本国籍を含む多重国籍者は、日本国籍を有しないわけではないため、外国人ではなく、日本人です。

 

2.在留資格とは

 在留資格とは、外国人が日本で適法に滞在するために必要な法律上の資格のことです。

 在留資格は、入管法で全38種類あり、日本へ入国・日本に在留する外国人は原則としてこの中から1つの在留資格を取得する必要があります。 つまり、日本では、在留資格に対応する活動を行う外国人だけを受け入れる一方で、在留活動として在留資格に対応しない活動を行う外国人を受け入れないということです。

 もっとも、平和条約国籍離脱者及び平和条約国籍離脱者の子孫については、入管法特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)に基づいて「特別永住者」という地位が与えられています。特別永住者には、特別永住者証明書が発行されます。なお、特別永住者証明書は在留カードと異なり、常時携帯義務はありません。 

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特別永住者証明書(出入国在留管理庁HPより引用)

 

 なお、在日米軍や軍で働く米国国籍職員及びその家族は、日米地位協定に基づいて、日本の入管法の適用を除外されており、在留資格を持たずに日本で在留することができます。その方々は、よく、Status of Fources Agreement(日米地位協定)を略して、SOFAと呼ばれています。

 

3.在留資格ビザ(査証)の違い:ビザ=在留資格ではない?

 ビザ(査証)は、日本に入国しようとする外国人に対し、日本国領事館等が、①当該外国人の所持する旅券が真正であり、かつ、本邦への入国に有効であること、②与える査証に記す条件の下において当該外国人の本邦への入国及び在留が差し支えないことを判断した旨の表示のことです(東京地判平成22・7・8訴月56・12・2865)。

 簡単に言えば、その外国人が持っている旅券(パスポート)が有効であるという「確認」と、ビザに記載された条件により入国することに支障がないという「推薦」の意味を持っ在外公館(海外の日本の大使館・領事館)が発行する日本入国のためのいわば推薦状のようなものです。 

 一方、在留資格とは、外国人が日本で滞在して、それぞれの資格ごとに法定された活動を認める許可のことです。 

 つまり、ビザ(査証)は日本入国の推薦状であるのに対し、在留資格は日本での滞在及びその活動を許可するものなので、両者は異なるものです。

 

 4在留資格の分類

 前述のように、日本へ入国・日本で在留する外国人は、原則として、入管法に定める在留資格のいずれかを有する必要があります。この在留資格は、多岐にわたる外国人の活動等をあらかじめ類型化し、どのような活動等であれば入国・在留が可能であるかを明らかにしているものです。

 在留資格は、下記のように分類ができます。

入管法別表1に記載のある活動類型資格:外国人が日本で行う活動に着目して分類された在留資格

入管法別表2・入管特例法に記載のある地位等類型資格: その外国人の身分や地位に着目して分類された在留資格

 

①については、その外国人が「何をするか」が着目するポイントであり、②は、その外国人が「どのような身分であるか」が着目するポイントです。

  

 さらに、①活動類型資格の中で、業務限定就労可能資格と、就労不可能資格に分類ができます。

 

在留資格の分類】

①活動類型資格(法別表1)
 ・業務限定就労可能資格
  具体例:「高度専門職」、「経営・管理」、「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」、「技能実習」 、「特定技能」等
 ・就労不可能資格
  具体例:「留学」、「家族滞在」、「短期滞在」等
②地位等類型資格(法別表2、入管特例法):無制限就労可能資格
「永住者」、「日本人の配偶者等」 、「永住者の配偶者等」、「定住者」、特別永住者

 

 

5.主な在留資格

 入管法は、この在留資格を有する者はこのような活動ができるということを在留資格ごとに類型化して規定をしています。

 

【主な在留資格

・「技術・人文知識・国際業務」(例:機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等)

・「経営・管理」(例:企業等の経営者、管理者)

・「企業内転勤」(例:外国の事業所からの転勤者)

・「技能実習」(例:技能実習生)

・「高度専門職」(例:就労資格の決定の対象となる範囲の外国人で、学歴・職歴・
年収等の項目ごとにポイントを付け、その 合 計 が 一 定 点 数(70点)以上に達した者

・「家族滞在」(例:長期滞在外国人の扶養を受ける配偶者・子)

・「留学」(例:日本の大学・短期大学、高等学校等への留学生、日本語学校の学生)

・「日本人の配偶者等」(例:日本人の配偶者、日本人の実子 、特別養子

・ 「永住者」(例:法務大臣から永住の許可を受けた者)

・「定住者」(例:日系人、定住インドシナ難民、中国残留邦人の配偶者・子など)

 

 外国人が日本でできる活動は在留資格によって異なるため、どの在留資格をその外国人がお持ちであるかを確認することが重要です。

 在留カード在留カードがない外国人の場合はパスポート)を見ることで、在留資格を確認することができます。