入管法に詳しい某行政書士の雑記ブログ

入管法に詳しい行政書士が気ままに語ります。

外国人が持っている在留カードとは

 外国人を雇用する場合、採用担当者は、まずはその外国人の在留カードを見て就労できるかについてチェックをする必要があります。

 しかし、初めて外国人を会社で雇用する場合は、在留カードを見たことすらないかもしれませんが、在留カードについて基本的な事項は押さえておく必要があります。

 

 今回は、外国人がお持ちの身分証である在留カードについて解説します。

 

1.在留カードの概要:そもそも在留カードって何なのか?

f:id:yshrchd:20200529014302j:plain

在留カード表面(出入国在留管理庁HPより引用)

f:id:yshrchd:20200529021006j:plain

在留カード裏面(出入国在留管理庁HPより引用)

 在留カードとは、中長期在留者に対し、上陸許可や在留資格の変更許可、在留期間の更新許可などの在留に係る許可に伴って交付されるものです。

 法務大臣が我が国に中長期間滞在できる在留資格及び在留期間をもって適法に在留する者であることを証明する「証明書」としての性格を有するとともに、上陸許可以外の在留資格に係る許可時に交付される在留カードは、従来の旅券になされる各種許可の証印等に代わっての「許可証」としての性格を有しています。

 在留カードには、

 ①氏名

 ②生年月日

 ③性別

 ④国籍・地域

 ⑤住居地

 ⑥在留資格

 ⑥在留期間

 ⑦就労制限の有無

 などが記載されています。

 ※外国人を採用する際にまず確認しなければならないのが、「在留資格」や「就労制限の有無」です。「在留資格」や「就労制限の有無」の部分を見て、就労できるかを判断することができます。

 

2.在留カードの顔写真について:顔写真の掲載がない場合がある?

 有効期間が16歳の誕生日の翌日以降の日までとして交付される在留カードには写真が表示されますが、有効期間が16歳の誕生日以前の日までとして交付される在留カードには写真は表示されません。

 つまり、16歳未満の子供の在留カードには、顔写真が表示されません。

f:id:yshrchd:20220121192510j:plain

在留カード

3.在留カードの交付場所について:在留カードはどこで交付される?

 新たに上陸する中長期在留者の方について、新千歳空港、成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港、広島空港、福岡空港の7空港では、上陸許可時に在留カードが交付されます。

 一方、上記7空港以外については、市区町村で住居地の届出を行った後、届け出た住居地に在留カードを発送されます。

 また、既に中長期在留者として在留している方(すでに在留カードをお持ちの方)に対しては、地方出入国在留管理官署において、在留期間更新許可申請在留資格変更許可申請在留資格取得許可申請及び永住許可申請が許可された場合や、在留カードの住居地以外の記載事項変更届出、在留カードの有効期間更新申請及び紛失や汚損による再交付申請の際に、新しい在留カードを交付されます。

 

4.在留カードの発行対象者:在留カードが発行されない外国人もいる?

 在留カードの発行対象者は、入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人で、具体的には次の①~⑥のいずれにも当てはまらない方です。 
①3月以下の在留期間が決定された人
②短期滞在の在留資格が決定された人
③外交又は公用の在留資格が決定された人
④これらの外国人に準ずるものとして法務省令で定める人(具体的には,亜東関係協会の本邦の事務所若しくは駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族の方)
特別永住者
在留資格を有しない人

在留カードの発行対象者でない具体例:観光目的で日本に短期間滞在する外国人

 

5.在留カードの「有効期間」について:在留期限と有効期間がある?

 在留カードの有効期間は、次のとおりです。

・永住者・高度専門職2号の方
 16歳以上の方:交付の日から7年間

 16歳未満の方:16歳の誕生日まで
・永住者・高度専門職2号以外の方
 16歳以上の方:在留期間の満了日まで

 16歳未満の方:在留期間の満了日又は 16歳の誕生日のいずれか早い日まで

※特によく勘違いしがちなのは、「永住者」です。「永住者」は在留期限は無期限ですが有効期間はあるため、在留期間更新は不要ですが、在留カードの有効期間の更新申請は必要です。

※よく見落としがちなのは、就労資格を持つ外国人の両親の子供で「家族滞在」の方について在留カードの有効期間です。その子供が16歳未満の場合は、「在留期間の満了日又は 16歳の誕生日のいずれか早い日まで」が在留カードの有効期間となっているため、在留期間の満了日より前に16歳の誕生日がくる場合は、在留カードの有効期間の更新申請が必要になります。外国人の方から、在留期限はまだだが、在留カードの有効期限が過ぎてしまったという相談を受けることがあります。在留カードの有効期間が経過した場合には、一刻も早く在留カードの有効期間更新申請をする必要があります。なお、在留カードの有効期間更新申請を申請期間中に行わなかったときは、入管法第71条の2の規定により、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。

 

6.在留カードとは別に指定書というものがパスポートに貼られる場合

 特定活動の在留資格で上陸許可・在留資格変更許可を受けた場合には、在留カードの交付の有無にかかわらず、旅券に貼付する上陸許可証印シールの付近に指定書を添付されます。

 特定活動という在留資格にはさまざまなものがあるため、旅券に貼られた指定書を見ないと日本でできる活動の詳細を確認することができないため、在留カードに加えて指定書を確認することも必要となります。  

f:id:yshrchd:20220121193511j:plain

特定活動(家事使用人)指定書

 また、高度専門職1号で上陸許可や在留資格変更許可を受けた場合も、在留カードの交付の有無にかかわらず、旅券に貼付する上陸許可証印シールの付近に指定書を添付されます。

f:id:yshrchd:20220121193307j:plain

指定書:高度専門職(1号ロ)

7.在留カードの常時携帯義務について:在留カードはいつも携帯必要?

 在留カードは常時携帯することが必要です。

 入国審査官、入国警備官、警察官等から提示を求められた場合には提示する必要があります。 
 在留カードを携帯していなかった場合は20万円以下の罰金、提示に応じなかった場合は1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあるため、注意が必要です。

 以下は、在留カードの常時携帯義務に関し、よくある質問です。

 Q:パスポートを携帯していれば在留カードは携帯していなくても大丈夫?

  ⇒パスポートを携帯しているかどうかにかかわらず、在留カードは常時携帯することが必要です。

 Q: 在留期間更新許可申請等の際、取次行政書士に依頼して申請する場合に在留カード行政書士に預けてしまえば、携帯義務違反となるのではないか?

  ⇒法令で定められた方が本人に代わって在留カードを提出、受領する場合は、法定のそれぞれの行為の範囲内において、本人の携帯義務違反にはならないため、行政書士に預けても、携帯義務違反になりません。

 

8.在留カードの常時携帯義務の例外について:子供も在留カードの常時携帯必要? 

 16歳未満の方については、在留カードの常時携帯義務が免除されているため、在留カードを常時携帯する必要はありません。

 

9.在留カードを紛失した場合:在留カードを紛失したらどうする?

  日本国内で在留カードを紛失した場合は、警察で発行される紛失届出証明書、盗難届出証明書などを取得の上、紛失を知った日から14日以内に地方出入国在留管理局で在留カードの再交付申請が必要です。

 一方、日本出国中に在留カードを紛失した場合は、外国の警察で発行される紛失届出証明書又は盗難届出証明書を取得の上、在留カードがなくとも、パスポートのみで日本へ再入国できますが、日本入国後14日以内に地方出入国在留管理局で在留カードの再交付申請が必要です。
 在留カードの紛失自体に対する罰則の規定はありません。
 ただし、紛失による在留カードの再交付申請を申請期間中に行わなかったときは、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。
 紛失,盗難等により在留カードの再交付を申請する場合は,参考となるべき資料として、警察で発行される紛失届出証明書、盗難届出証明書などの提出が必要です。

 

10.在留カードの返納手続について:在留カードを返納する必要があるのは?

 在留カードは下記の際に失効をするため、法務大臣に失効済みの在留カードを返納する必要があります。

在留カードの交付を受けた中長期在留者が中長期在留者でなくなったとき

 ⇒失効した日から14日以内に返納
在留カードの有効期間が満了したとき

 ⇒失効した日から14日以内に返納
③ 中長期在留者が出国(再入国許可による出国を除く。)したとき

 ⇒出国港において直ちに返納
④ 中長期在留者が再入国許可による出国後,再入国許可の有効期間内に再入国しなかったとき

 ⇒失効した日から14日以内に返納
⑤ 新たな在留カードの交付を受けたとき

 ⇒直ちに返納
⑥ 死亡したとき

 ⇒中長期在留者が死亡したときは、死亡した中長期在留者の親族又は同居者の方が死亡の日(死亡後に在留カードを発見したときは、その発見の日)から14日以内に返納

 

※期限内に返納しないと罰金に処せられることがあります。
※紛失した旧在留カードを発見した場合には、発見の日から14日以内に古い在留カードを返納する必要があります。

 

返納方法について:下記①or②です。

①住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に直接持参

②参考書式「在留カード等の返納について」(下記の法務省出入国在留管理庁HPに書式があります。)及び返納理由を証する文書(死亡証明書、戸籍謄本等)を添付した上、下記の返納先に送付

(送付による場合の返納先)
〒135-0064 東京都江東区青海2-7-11 東京港湾合同庁舎9階 東京出入国在留管理局おだいば分室あて
※封筒の表に「在留カード等返納」と表記が必要です。

www.moj.go.jp

 

11.在留カードの有効性の確認方法について

 出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会サイトにより、在留カード等が失効しているかについて確認することができます。

 なお、照会結果は在留カード等の有効性を証明するものではない点には注意が必要です。

 出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会サイト:

https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx

 

12.在留カード等読取アプリケーションについて

 2020年12月25日より、出入国在留管理庁より、在留カード等読取アプリケーションの無料配布がスタートしています。

 そのアプリを使うことで、在留カード及び特別永住者証明書のICチップを読み取り、その情報が偽造・改ざんされたものでないことを確認できます。

 詳しくは下記出入国在留管理庁のHPをご参照ください。 

www.moj.go.jp