入管法に詳しい某行政書士の雑記ブログ

入管法に詳しい行政書士が気ままに語ります。

~在留資格認定証明書交付申請について~外国人を海外から呼び寄せて雇用したい場合

  近年、外国人労働者は増えてきていますが、海外にいる外国人を日本に呼び寄せて就労してもらうには、就労できる在留資格の取得が必要です。

 現在、海外に住んでいる外国人を日本に呼び寄せて雇用したい場合(海外在住の外国人が日本で就労・長期滞在する場合)は、来日前にあらかじめ日本の地方出入国在留管理局で、招聘人(日本の就労先企業等)を通じて、在留資格に応じた「在留資格認定証明書交付申請」をして審査を受け、同証明書の交付を受けるのが一般的です。

 

 今回は、外国人を海外から呼び寄せて雇用したい場合を念頭に、在留資格認定証明書交付申請について語ります。

 

1.在留資格認定証明書(COE)とは

 在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility。日本語だと長いのでよく英語の頭文字を取って、よくCOEと呼んでいます。)は、日本に入国しようとする外国人が、入国のための条件に適合しているかどうかについて法務大臣が事前に審査を行い、この条件に適合すると認められる場合に交付されるものです。

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在留資格認定証明書交付(COE)申請の全体像

(2020年版「出入国在留管理」資料編p136より引用)

  海外の日本大使館・領事館に、在留資格認定証明書を提示して、査証の発行申請をした場合には、法務大臣の事前審査を終えているものとして取り扱われるため、査証の発行が迅速に行われます。

 また、日本に上陸するときも、出入国港において在留資格認定証明書を提示する外国人は、入国審査官から在留資格に関する上陸条件に適合する者として取り扱われるので、上陸審査が簡易迅速に行われます。

 なお、在留資格「短期滞在」については、在留資格認定証明書交付の対象とされていません。

 

2.在留資格認定証明書(COE)の有効期間について

 在留資格認定証明書の有効期間は、交付日より3ヶ月間のため、その有効期間内に在外公館での査証申請及び日本に入国をしなければ無効となります。また、在留資格認定証明書の有効期間と査証の有効期間は異なる点に注意が必要です。 

 そのため、在留資格認定証明書の交付を受けた後は、速やかに在外公館で査証申請を行った上、在留資格認定証明書の有効期間内に日本へ入国をする必要があります。

 

3.在留資格認定証明書交付(COE)申請について

 在留資格認定証明書交付申請には、日本国内で申請人の代理人(招聘人)となる企業・団体又は個人が必要となります。日本で就労をする場合は、就労先企業が招聘人となり、日本人と結婚する場合や日系人などの場合は日本人配偶者や在日親族などが招聘人となります。

 在留資格認定証明書交付申請時は、原則、申請人はまだ海外にいるため、その招聘人が代理人として申請書へ署名し、管轄の入国管理局へ申請します。誰が代理人となることができるかについては、在留資格によって異なります。

 また、在留資格によって、在留資格認定証明書交付申請に必要な提出書類は異なります。

 なお、例外的に、定住者や特定活動の在留資格などのうち「告示外」にあてはまるケースでは、在留資格認定証明書交付申請の対象ではないため、来日前に在留資格認定証明書交付申請をするのではなく、申請人が短期滞在で来日している期間中に在留資格変更許可申請をしなければならないことがあります。

 

3.日本で就労するための主な「在留資格」について 

  経営・管理:日本において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
技術・人文知識・国際業務:日本の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学、その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動
企業内転勤:日本に本店、支店、その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が日本にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う技術・人文知識・国際業務の活動
 

 他の就労資格もありますが、今回は、上記の主要な就労資格を念頭にします。

 

4.雇用する外国人が、外国籍の家族を同伴したい場合の在留資格について 

 日本の会社に雇用された外国人が、外国籍の配偶者や子供を同伴して入国する場合もあります。就労ビザを持って在留する外国人の扶養を受ける配偶者または子は、「家族滞在」の在留資格となります。

 

5. 日本で就労を開始する外国人の日本入国までの一般的な流れについて

①(就労先企業及びご本人)行政書士より案内する申請に必要な情報、資料のご準備

②(行政書士)COE申請書作成

③(就労先企業)COE申請書へのご署名ご捺印及びご署名ご捺印いただいた申請書類を行政書士へ郵送

④(行政書士)東京入管でのCOE申請

 申請してから許可がでるまで目安は就労先企業のカテゴリーにより異なります。

 就労先企業のカテゴリー1・2:約2週間

 就労先企業のカテゴリー3:約2か月

 就労先企業のカテゴリー4:2か月以上

※審査期間はあくまで目安です。入管より追完指示等がある場合は伸びる可能性があります。

※就労先企業のカテゴリー分けについては、下記(6.入管申請上の就労先企業のカテゴリーについて)を参照ください。

⑤(行政書士)COE受領後、本人又は就労先企業へ送付

⑥(ご本人)COE発行後、現地日本大使館・領事館での査証取得(約1週間程度)

※ご本人様よりお近くの日本在外公館にお問い合わせ頂き、必要書類・申請方法(代理機関を通す必要性の有無等)・受付日時・ビザ発行までに要する日数等、予めご確認頂くことをお奨め致します。

⑦(ご本人様)査証発行後、日本へ入国(ご本人)

 COEの発行日より3ヶ月以内に入国しないと、COEが無効になるため、ご注意ください。入国の際、パスポートに貼られている査証並びにCOEを空港の入管に提示すると、パスポートに上陸許可証印が貼られ、在留カードが発行されます。

⑧住民登録(ご本人)

 住居地を定めてから14日以内に居住地管轄の役所にて住民登録の手続きをする必要があります。

 

6.入管申請上の就労先企業のカテゴリーについて

 就労資格のうち、「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「企業内転勤」は、外国人を雇用する企業の規模などによって、4種類のカテゴリーに分類されています。

 カテゴリーにより、審査期間や申請の際に必要な提出書類が異なります。

(1)カテゴリー1:代表的なものは、四季報に掲載のある上場企業です。

 ①日本の証券取引所に上場している企業
 ② 保険業を営む相互会社
 ③ 日本又は外国の国・地方公共団体
 ④ 独立行政法人
 ⑤ 特殊法人認可法人
 ⑥ 日本の国・地方公共団体公益法人
 ⑦ 法人税法別表第1に掲げる公共法人

 ⑧高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)
 ⑨一定の条件を満たす企業等(詳しくは法務省HPに記載があります)

 

(2)カテゴリー2

前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人

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給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表

※給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表について、税務署の受理印のあるものの写しが申請の際に必要になりますが、電子申告の場合は税務署の受理印がないのでその代わりに、送信データが受け付けられたことの証明であるメール詳細の写しも必要となります。

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「メール詳細」

(3)カテゴリー3

前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,000万円未満の団体・個人

(4)カテゴリー4:具体例は、新設したばかりの会社です。

 他のいずれのカテゴリーにも該当しない団体・個人

 

 企業のカテゴリーによって、在留資格の取得や更新などの手続きで提出する必要書類が異なるため、外国人を雇用する場合には、その会社がどのカテゴリーに該当するかを知っておくことが有用です。