入管法に詳しい某行政書士の雑記ブログ

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みなし再入国許可・再入国許可について~在留資格を取得した外国人の一時出国~

 在留資格を取得している外国人が一時出国をして再度日本へ再入国を予定している場合、「みなし再入国許可」や「再入国許可」を取得する必要があります。

 

 今回は、「みなし再入国許可」や「再入国許可」について解説します。

1.再入国許可の制度について

(1)再入国許可とは

 再入国許可とは、日本に在留する外国人が一時的に出国し再び入国しようとする場合に、入国・上陸手続を簡略化するために法務大臣が出国に先立って与える許可のことです。

 外国人が日本を出国してしまえば、日本との関係はなくなるので、それまで日本で在留中に保有していた在留資格は出国とともに消滅してしまうのが通常です。

 しかし、例えば、「留学」の在留資格を有する外国人が夏季休暇の際に本国の実家に帰省するため一時的に出国して数週間で日本に戻る場合など、外国人が一旦日本出国後に再度日本に入国してそれまでの在留資格と同様の目的をもって在留しようとする場合もあります。そのような場合にまで、日本出国時にそれまで有していた在留資格が消滅し、再入国の際に再度あらかじめ査証取得をする必要があるというのはあまりに不便です。

 そこで、そのような不便を解消するため、在留資格をもって在留する外国人が、出国前にあらかじめ再入国許可を受けて出国し、その再入国許可の有効期限内に再入国をすれば、その在留資格・在留期間が継続されるという制度になっています。そのため、再入国許可(みなし再入国許可を含む。)を受けた外国人は、再入国時の上陸申請の際、通常必要とされる査証が免除され(入管法6条1項但書)、簡便な上陸審査により上陸許可を受けられます。

 上陸審査につき、詳しく説明をすると、入国審査官により以下の上陸のための条件に適合しているかどうかを審査されることになります。そして、再入国の許可を受けている者は①(入管法6条1項但書により査証は不要)と④のみが上陸のための条件となります。
 ①旅券及び査証(査証を必要とする場合)の有効性

 ②活動の非虚偽性、在留資格該当性、上陸許可基準適合性

 ③在留期間の適合性

 ④上陸拒否事由非該当性

(2)再入国許可の場合の上陸許可

 一度日本から再入国許可により出国をして、日本へ再入国をする場合は、パスポートに下記のようなスタンプが押印されます。

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再入国での上陸許可スタンプ

2.みなし再入国許可について

(1)みなし再入国の概要

 みなし再入国許可とは、2012年の法改正により導入された制度で、一定の場合には、原則として通常の再入国許可の取得を不要とするものです。

(2)みなし再入国許可の対象者:下記条件をすべて満たす場合です。

 ①在留資格をもって在留する外国人で有効な旅券(中長期在留者は旅券+在留カード)を所持している者であること

 ②【「3月」以下の在留期間を決定された者及び「短期滞在」の在留資格をもって在留する者】以外の者であること

 ③出国の日から1年以内に再入国する場合(ただし、在留期限が出国の日から1年を経過する前に到来する場合は在留期限までに再入国)

 

 なお、下記に該当する場合は、みなし再入国許可の対象とならないため、通常の再入国許可を取得する必要があります。

 ① 在留資格取消手続中の者
 ② 出国確認の留保対象者
 ③ 収容令書の発付を受けている者
 ④ 難民認定申請中の「特定活動」の在留資格をもって在留する者
 ⑤ 日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあることその他の出入国の公正な管理のため再入国の許可を要すると認めるに足りる相当の理由があるとして法務大臣が認定する者

(3)みなし再入国許可により出国する場合の手続き

 通常の再入国許可と異なり、事前に地方出入国在留管理局での申請は不要です。

 みなし再入国許可を利用して出国する場合は、出国の際に空港で、再入国出入国記録で、「1.一時的な出国であり,再入国する予定です。」の欄にチェックを入れ、その用紙を入国審査官に見せるとともにみなし再入国許可による出国を希望する旨伝えるだけです。 

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再入国出入国記録(出入国在留管理局HPより引用)

 

(4)みなし再入国許可の注意点

・通常の再入国許可と異なり、出国中に海外でみなし再入国許可の有効期間の延長は不可です。

・出国の日から1年以内(在留期限が出国の日から1年を経過する前に到来する場合は在留期限まで)に必ず再入国する必要があります。この期間は、航空機の遅延・欠航等本人の責めに帰すことができない理由があっても、延長できません。

・みなし再入国許可の有効期間の計算における起算日は、初日不算入の原則により,出国した日の翌日になるため、例えば、6月7日に出国した場合のみなし再入国の有効期間は、翌年の6月7日までとなります。

・ 在留期間の更新または在留資格変更手続中に、一時出国を希望する場合も、みなし再入国許可をすることができます。ただし、申請中に出国する場合で、許可が下りるまでに在留期限が満了してしまう場合は、在留期限満了日の2か月後までに日本に再入国して、地方出入国在留管理局で申請結果の受け取りをする必要があります。

・有効な旅券及び特別永住者証明書を所持する特別永住者の方も、みなし再入国許可の対象であり、みなし再入国許可の有効期間は、出国の日から2年間です。

 

  3.通常の再入国許可の申請について

(1)通常の再入国許可の概要

 在留期限まで1年以上残っていて、出国から1年以上経過した後に再入国する場合は、みなし再入国許可の対象外となります。

 そこで、、在留する外国人で在留期間の満了の日以前、かつ、出国から1年以上経過した後に再び入国する意図をもって出国しようとする外国人は、「再入国許可」を出国前に取得する必要があります。

 

(2)通常の再入国許可の申請先

 住居地を管轄する地方出入国在留管理局

 

(3)通常の再入国許可申請の必要書類

 ① 再入国許可申請

 ② 旅券

 ③ 在留カード

 ④ 収入印紙(一次再入国許可の場合:3,000円、数次再入国許可の場合:6,000円)

 ※なお、再入国許可は申請した当日に許可されます。

 

(4)申請可能な者の主な具体例

 ①申請人本人

 ②申請人本人が16歳未満の場合、日本に在住の親族(両親等)

 ③申請取次行政書士

 

(5)通常の再入国許可の有効期限

 有効期間は、現に有する在留期間の範囲内で,5年間(特別永住者の方は6年間)を最長として決定されます。

 なお、1回限り有効のものと有効期間内であれば何回も使用できる数次有効のものの2種類があります。

 

(6)通常の再入国許可の見本

 入管で通常の再入国許可を取得した場合は、下記の再入国許可のシールがパスポートに貼られることになります。

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通常の再入国許可

(7)通常の再入国許可の延長

 みなし再入国許可と異なり、通常の再入国許可であれば、再入国許可の有効期間内に再入国をすることができない相当の理由がある場合には、在外公館で再入国許可の有効期間の延長申請ができます。

 ただし、再入国許可が効力を生じた日から6年(特別永住者の場合は7年)を超えない範囲に限られ、日本で許可されている在留期間を超えて有効期間の延長を行うことはできません。また、1回の許可により延長する期間は1年を超えることはできません。