入管法に詳しい某行政書士の雑記ブログ

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【外国人を雇用する事業主必見】外国人の不法就労とそのデメリットとは

  外国人労働者の雇用により、外国人特有の感性・能力の活用で会社の活性化を図ることができます。

 一方で、不法就労も発生しており、外国人労働者の受け入れについては、適正に行うことが必要です。最近ニュースになった不法就労の例を挙げると、在留資格のない外国人(少なくとも184人)がフードデリバリー大手「ウーバーイーツ」の配達員をするのを手助けしたとして、警視庁は2021年6月22日、運営していた会社と元幹部ら2人を入管法違反(不法就労助長など)の疑いで書類送検しています。

 

 そこで、本記事では、外国人労働者不法就労やそのデメリットを解説します。

 

【目次】

 

1.外国人労働者不法就労とは

 不法就労となるのは次の3つの場合です。

(1)不法滞在者や被退去強制者が働く場合

  具体例①:在留期限の切れた人や密入国する人が働く

  具体例②:強制送還されることがすでに決まっている人が働く

(2)就労できる在留資格を有していない外国人で就労許可を受けていないのに働く場合

 具体例①:観光等の短期滞在目的で入国した人が就労許可を受けずに働く

 具体例②:留学生や難民認定申請中の人が就労許可を受けずに働く

(3)入管から就労を認められた範囲を超えて働く場合

 具体例①:外国料理のコックや語学学校の先生として就労を許可された人が工場で作業員として働く

 具体例②:留学生が就労を許可された時間を超えて働く

 

2.不法就労をさせた場合の事業主としてのデメリット

(1)法的制裁:事業主も処罰の対象

 不法就労をさせたり(働くことが認められていない外国人を雇用したり)、不法就労をあっせんした者は、「3年以下の懲役」若しくは「300万円以下の罰金」又はその併科となります。

 外国人を雇用する際に、不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には、処罰を免れないことに注意が必要です。

  なお、外国人である事業主が不法就労助長行為を行うと、日本から退去強制の対象となります。

 

(2)社会的制裁:企業イメージの悪化

 企業コンプライアンスが重視される現在では、不法就労者の雇用が発覚した場合、消費者、取引先等の信用を失い、企業イメージが悪化する可能性があります。

 

 3.外国人を雇用する際の確認手順

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東京都都民安全推進本部発行「外国人労働者雇用マニュアル」12-13頁より引用

(1)在留カード表面の「在留資格」「在留期間」を確認

  ①在留資格:就労できる資格であることを確認

  ②在留期間:在留期間を経過していないことを確認

 

(2)在留カード表面の「就労制限の有無」欄を確認

 ①「就労不可」の記載がある場合

  ⇒原則就労不可。ただし、裏面の資格外活動許可欄が許可となっていれば、記載内容の制限を超えない範囲で就労可能。

 ②「就労制限なし」の記載がある場合

  ⇒就労内容に制限なし

 ③「在留資格に基づく就労のみ可」の記載がある場合

  ⇒就労内容に制限があり、在留資格で定められた就労のみ可能。在留資格が「特定技能」の場合は指定書も確認

 ④「指定書により指定された就労活動のみ可」の記載がある場合

  ⇒指定書により指定された就労のみ可能。

 

難民認定申請中の人について、有効な在留カードを所持していない場合や在留カードに「就労不可」となっている場合は雇用不可 

在留カードを所持していなくても就労できる場合がある方

 ・旅券に後日在留カードを交付する旨の記載がある方

 ・「3月」以下の在留期間が付与された方 

 ・「外交」「公用」の在留資格

(3)在留カード裏面の「資格外活動許可欄」を確認

  「就労不可」や「在留資格に基づく就労のみ可」の方であっても、裏面の「資格外活動許可欄」に次のいずれかの記載がある場合は就労することができます。ただし、資格外活動許可については、就労時間や就労場所に制限があるので注意が必要です。

 ①「許可(原則28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」

 ⇒複数のアルバイト先がある場合は、その合計が週28時間以内である必要があります。

 ②「許可(「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「技能」に該当する活動・週28時間以内)」

 ⇒この場合は地方公共団体等との雇用契約に基づく活動である必要があります。

 ③「許可(資格外活動許可に記載された範囲内の活動)」

 ⇒この場合は、資格外活動許可書を確認する必要があります。

(4)仮放免許可は在留資格ではない点に注意

 仮放免とは、入管法違反の疑いで退去強制手続中であるか、又は、既に退去強制されることが決定した人が、本来であれば入管の収容施設に収容されるべきであるところ、健康上の理由等様々な事情により一時的に収用を解かれていることです。

 被仮放免者には、仮放免許可書が交付されますが、仮放免の許可は在留資格ではないので、基本的に就労することはできません。

 仮放免許可書の裏面に「職業又は報酬を受ける活動の禁止」と条件が付されている場合は、就労することができません。また、仮放免許可書にこの条件が付されていない場合であっても、就労可能な在留カードを所持している方を除き、就労することはできません。

4.外国人雇用の際のよくある質問

(1)不法就労を知らずに外国人を雇用した場合でも処罰の対象ですか?

 不法就労と知らずに雇用したとしても、在留カードの確認を怠ったなどの過失があった場合は処罰の対象です。外国人を雇用する際は、在留カード等をよく確認して、雇用可能かを判断する必要があります。

 

(2)雇用している「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留中の外国人が、在留期間内に、在留期間更新許可申請をしたのですが、結果が出る前にその在留期間が過ぎてしまいそうです。引き続き雇用は可能ですか?

 在留期間更新許可申請に対する処分が在留期間の満了日までになされない場合は、従前の在留期間の満了日から2か月を経過するまで、引き続き従前の在留資格をもって日本に在留することができるため、雇用しても問題はありません。

 ただし、在留期間の満了日以降に、在留期間更新許可申請に対する不許可処分がなされた場合は従前の在留資格を喪失するため、処分結果の通知に従う必要があります。

5.最後に

 在留資格は複雑なもので、ネットや書籍の情報を一読しただけはわからない場合が多くなっています。そのため、外国人を雇用する場合は、外国人の在留資格申請手続きの専門家である申請取次資格を持つ行政書士に相談することをおすすめします。