日本では、法律上同性婚を認められてはいませんが、外国では同性婚を認める国が増加して2020年5月時点で29の国・地域で同性婚が認められている中、日本へ同性婚の配偶者を帯同したいという人が増えており、私も実際に同性婚の配偶者の在留資格について相談を受けたことがあります。
1.入管法上の「配偶者」について
入管法には、婚姻関係を基にした在留資格があり、「家族滞在」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」があります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」等の就労資格を持つ外国人が配偶者を日本へ帯同する場合、通常、その配偶者は「家族滞在」という在留資格になります。
そうすると、同性婚の配偶者も「家族滞在」という在留資格で日本へ入国をすればいいかと思われるかもしれません。
しかし、入管法上の「配偶者」とは、日本の婚姻に関する法律である民法において有効なものとして取り扱われる婚姻の配偶者を意味し、外国で有効に成立した同性婚であっても、同性婚による配偶者は含まれないと解釈されています。
したがって、「家族滞在」等の婚姻関係を基にした在留資格には該当しないことになります。
(1)同性婚の配偶者に対する入国・在留審査についての法務省通達
では、同性婚の配偶者の在留資格はどのようにしたらいいのでしょうか?
この点について、平成25年10月18日付(法務省管在5357号)で、法務省より「同性婚の配偶者に対する入国・在留審査についての通知」というタイトルで地方入国管理局宛で通達が出ています。
【同性婚の配偶者に対する入国・在留審査について(通知)】
「在留資格「家族滞在」、「永住者の配偶者等」等にいう「配偶者」は、我が国の婚姻に関する法令においても有効なものとして取り扱われる婚姻の配偶者であり、外国で有効に成立した婚姻であっても同性婚による配偶者は含まれないところ、本年5月にフランスで「同性婚法」が施行されるなどの近時の諸外国における同性婚に係る法整備の実情等を踏まえ、また、本国で同性婚をしている者について、その者が本国と同様に我が国においても安定的に生活できるよう人道的観点から配慮し、今般、同性婚による配偶者については、原則として、在留資格「特定活動」により入国・在留を認めることとしました。ついては、本国で有効に成立している同性婚の配偶者から、本邦において、その配偶者との同居及び扶養を受けて在留することを希望して「特定活動」の在留資格への変更許可申請がなされた場合は、専決により処分することなく、人道的観点から配慮すべき事情があるとして、意見を付して本省あて請訓願います。なお、管下出張所長へは、貴職から通知願います。」
この通達により、現在、外国人同士の同性婚については、当該外国人当事者の各本国において有効に成立している場合は、本体者に日本での在留資格があれば、その同性配偶者に告示外特定活動として、「特定活動」への在留資格変更を許可する運用になっています。
(2)同性婚の配偶者の告示外特定活動の要件
同性婚の配偶者の「特定活動」が認められる要件をまとめると、以下の通りになると考えられます。
①当該外国人当事者の各本国において同性婚が有効に成立していること
※日本の民法は同性婚を認めていないため、外国人と日本人の同性婚は日本では法的に有効な婚姻とされず、日本人と外国人の同性婚については本件通達の「特定活動」は許可されないことになります。
②日本において同性婚の配偶者との同居及び扶養を受けて在留することを希望していること
③同性婚について、互いに協力し、扶助しあって共同生活を営むという実態を伴っていること
④扶養者である同性婚の配偶者について日本での在留資格を保有していること
⑤同性婚の配偶者が日本で安定的・継続的に在留していけると認められる扶養者の経済力があること
(3)同性婚の配偶者の告示外特定活動の内容
同性婚の配偶者の告示外特定活動の内容は、「○○の在留資格をもって在留する〇国人○○と同居し、かつ、〇国人の扶養を受ける者が行う日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」となります。
告示外特定活動であるこの同性パートナーの在留資格については、原則として就労が認められていません。
ただし、資格外活動許可を受けることは可能であるため、週28時間以内であればパート・アルバイト等の資格外活動を行うことはできます。
3.実際の「告示外特定活動」の在留資格取得の手順
同性婚の配偶者の在留資格は、「特定活動」でも告示外のものであるため、在留資格認定証明書交付申請の対象とはなりません。
そのため、まずは、申請に必要な立証資料等をあらかじめ揃えたうえで、同性婚の配偶者が「短期滞在」で日本へいったん入国した後、地方入管で「特定活動」への在留資格変更許可申請をすることになります。また、入管での審査にかなり時間はかかるので注意が必要です。
4.最後に
同性婚の配偶者の在留資格については、告示外の特定活動というかなり特殊なものであるので、申請をする場合は専門家である行政書士に依頼することをお勧めします。