入管法に詳しい某行政書士の雑記ブログ

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高度専門職外国人が外国人の家事使用人を雇うには(在留資格「高度専門職」の優遇措置)

 外国人が個人的に外国人の家事使用人を雇用する場合、在留資格「経営・管理」、「法律・会計業務」等で在留する一部の外国人に対してのみ認められています。そして、「高度専門職」の在留資格保有する外国人については、一定の要件の下で、外国人の家事使用人を帯同することが認められます。

 

 今回、「高度専門職」の在留資格保有する外国人が、外国人の家事使用人を雇う要件を解説します。

 

【目次】

 

1.高度専門職外国人に雇用される家事使用人の在留資格の類型

(1)高度専門職外国人に雇用される家事使用人の3類型の概要

 高度専門職の在留資格をもって在留する外国人に雇用される家事使用人の在留資格には3つのタイプがあります。

 ①1つ目は高度専門職外国人と共に(又は後から)本邦に入国する家事使用人(特定活動告示2号の2。「家事使用人(入国帯同型)」)

 ②2つ目は高度専門職外国人に13歳未満の子がいること等により家事に従事することが認められる家事使用人(特定活動告示2号。「家事使用人(家庭事情型)」)

 ③3つ目は投資運用業等に従事する高度専門職外国人に雇用される家事使用人(特定活動告示2号の3。「家事使用人(金融人材型)」)

 

 2021年7月30日に特定活動告示が改正された関係で新しく類型が1つ追加されています。具体的には、今まで、①入国帯同型(外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する場合)、②家庭事情型(13歳未満の子又は病気等により日常の家事に従事することができない配偶者がいる場合)だけだったのが、新たに、③金融人材型(高度専門職外国人が投資運用業等に従事するしている場合)が追加されています。

 

(2)高度専門職外国人に雇用される家事使用人の3類型の違い

 上記3つのタイプの違いは、以下の点にあります。

・家事使用人(入国帯同型)は、雇用主と共に出国する予定であることが必要で雇用主の変更は認められません。

・家事使用人(家庭事情型)は、雇用主の変更が認められる一方、雇用主である高度専門職外国人が13歳未満の子等を有している必要があります。

・家事使用人(金融人材型)については、高度専門職外国人の世帯年収等に係る要件
を満たしていれば、雇用主と共に出国する予定であることや、雇用主である高度専門職外国人が13歳未満の子等を有していることなどの要件は不要です。

 

 なお、家事使用人(入国帯同型)、家事使用人(家庭事情型)、家事使用人(金融人材型)のいずれにも該当するときは、これらの違いを理解した上で、いずれかを選択することになります。

 

2.家事使用人の3類型のそれぞれの要件

(1)家事使用人(入国帯同型)の要件

①高度専門職外国人に雇用されていること。
② 雇用主である高度専門職外国人が申請人以外に家事使用人を雇用していないこと。
③申請人の入国の時点において,雇用主である高度専門職外国人の日本入国後の世帯年収(予定)が1000万円以上であること。
 ※「世帯年収」:高度専門職外国人が受ける報酬の年額と当該外国人の配偶者が受
ける報酬の年額を合算したもの。配偶者以外の者の報酬などは含まれません。
④ 雇用主である高度専門職外国人が使用する言語により日常の会話を行うことができること。
⑤月額20万円以上の報酬を受けること。
⑥18歳以上であること。
⑦ 次のいずれかに該当すること
 ⅰ雇用主である高度専門職外国人と共に日本へ入国する場合
上陸申請を行う直前まで継続して1年以上当該雇用主である高度専門職外国人に個人的使用人として雇用されていること。
 ※「1年以上」の起算日は、申請人の入国日
 Ⅱ雇用主である高度専門職外国人が先に日本へ入国する場合
 雇用主である高度専門職外国人が日本へ入国するまで継続して1年以上当該高度専門職外国人に個人的使用人として雇用され、かつ、当該高度専門職外国人が日本へ入国後、引き続き当該高度専門職外国人又は当該高度専門職外国人が日本へ入国する前に同居していた親族(6親等内の血族、配偶者又は3親等内の姻族)に雇用されていること。 

 

(2)家事使用人(家庭事情型)の要件

①雇用主である高度専門職外国人が申請人以外に家事使用人を雇用していないこと。
② 申請人の入国の時点において,雇用主である高度専門職外国人の日本入国後の世帯年収(予定)が1000万円以上であること。
 ※「世帯年収」:高度専門職外国人が受ける報酬の年額と当該外国人の配偶者が受
ける報酬の年額を合算したもの。配偶者以外の者の報酬などは含まれません。
③ 雇用主である高度専門職外国人、申請人の入国の時点において、13歳未満の子又は病気等により日常の家事に従事することができない配偶者を有すること。
 ※「13歳未満」については申請人の入国日における年齢
④雇用主である高度専門職外国人が使用する言語により日常の会話を行うことができること
⑤月額20万円以上の報酬を受けること。
⑥18歳以上であること。 

(3)家事使用人(金融人材型)の要件

①雇用主である高度専門職外国人が、金融商品取引法第28条第2項に規定する第二種金融商品取引業、同条第3項に規定する投資助言・代理業又は同条第4項に規定する投資運用業に係る業務に従事していること。
②申請人の入国の時点において,雇用主である高度専門職外国人の世帯年収に係る以下の区分に応じ、それぞれ次の要件に該当すること。
 Ⅰ 1,000万円以上3,000万円未満 :申請人以外に家事使用人を雇用していないこと。
 Ⅱ 3,000万円以上:申請人以外に家事使用人を雇用していない又は申請人以外に雇用している家事使用人の数が1名であること。
※「世帯年収」:高度専門職外国人が受ける報酬の年額と当該外国人の配偶者が受け
る報酬の年額を合算したもの。配偶者以外の者の報酬などは含まれません。 

 

3.家事使用人の3類型のそれぞれの必要書類(在留資格認定証明書交付申請の場合)

(1)家事使用人(入国帯同型)の必要書類

在留資格認定証明書交付申請書(「特定活動」の様式・「○上記以外の目的」を選択) 1通
法務省のホームページから取得することもできます。

www.moj.go.jp


② 写真(縦4cm×横3cm) 1枚
※ 申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。
③返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通
④ 申請人の活動の内容,期間,地位及び報酬を証する文書 1通
⑤ 雇用主である高度専門職外国人の在留資格認定証明書交付申請の受理票、在留資格
証明書又は在留カードいずれかの写し 1通
 ※ 高度専門職外国人と同時に申請する場合は不要

⑥ 雇用主である高度専門職外国人の世帯年収を証する文書 1通
⑦雇用主である高度専門職外国人が申請人以外に家事使用人を雇用していない旨を記載した文書 1通
⑧雇用主である高度専門職外国人が日常生活において使用する言語について会話力を有することを明らかにする資料 1通
雇用契約書(写し)及び労働条件を理解したことを証する文書 1通
 ※厚生労働省作成のモデル雇用契約書を使用してください。
⑩高度専門職外国人が出国する場合は,その者の負担により共に出国することが予定されていることを誓約する文書 1通
 ※雇用契約書に当該条項がある場合は不要です。
⑪上陸申請を行う直前までに継続して1年以上雇用されていることを明らかにする資料(雇用契約書の写し等) 1通
⑫高度専門職外国人が先に日本に入国した後、引き続き当該高度専門職外国人が本邦へ入国する前に同居していた親族に雇用されている場合のみ、以下の資料
・高度専門職外国人が日本に入国するまで継続して 1 年以上雇用されていたことを明らかにする資料(雇用契約書の写し等) 1通
・高度専門職外国人が日本へ入国した後、上陸申請を行う直前まで引き続き親族に雇用されていることを明らかにする資料(雇用契約書等) 1通
・高度専門職外国人と親族との親族関係を立証する資料 1通
・高度専門職外国人と親族との同居事実を立証する資料(同一住所に居住していたことを証明する資料) 1通

(2)家事使用人(家庭事情型)の必要書類

在留資格認定証明書交付申請書(「特定活動」の様式・「○上記以外の目的」を選択) 1通

法務省のホームページから取得することもできます。

www.moj.go.jp

② 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
※ 申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。
③ 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通
④申請人の活動の内容、期間、地位及び報酬を証する文書 1通
⑤ 雇用主である高度専門職外国人に係る次のいずれかの資料
 Ⅰ 高度専門職外国人の在留カード又はパスポートの写し 1通
 Ⅱ 当該高度専門職外国人と共に入国する場合は、当該高度専門職外国人に係る在留資格認定証明書交付申請の受理票写し又は在留資格認定証明書写し 1通
 ※高度専門職外国人と同時に申請する場合は不要です。
⑥雇用主である高度専門職外国人の世帯年収を証する文書 1通
⑦ 雇用主である高度専門職外国人が申請人以外に家事使用人を雇用していない旨を記載した文書 1通
⑧ 雇用主である高度専門職外国人が日常生活において使用する言語について会話力を有することを明らかにする資料 1通
雇用契約書(写し)及び労働条件を理解したことを証する文書 1通
 ※ 厚生労働省作成のモデル雇用契約書を使用してください。
⑩ 高度専門職外国人が13歳未満の子又は病気等により日常の家事に従事することができない配偶者を有することを証する文書 1通

(3)家事使用人(金融人材型)の必要書類

在留資格認定証明書交付申請書(「特定活動」の様式・「○上記以外の目的」を選択) 1通

法務省のホームページから取得することもできます。

www.moj.go.jp


② 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
※ 申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。
③ 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの 1通
④申請人の活動の内容,期間,地位及び報酬を証する文書 1通
④ 雇用主である高度専門職外国人に係る次のいずれかの資料
 Ⅰ 高度専門職外国人の在留カード又はパスポートの写し 1通
 Ⅱ 当該高度専門職外国人と共に入国する場合は、当該高度専門職外国人に係る在留資格認定証明書交付申請の受理票写し又は在留資格認定証明書写し 1通
 ※高度専門職外国人と同時に申請する場合は不要です。
⑥雇用主である高度専門職外国人の世帯年収を証する文書 1通
⑦雇用主である高度専門職外国人が申請人以外に家事使用人を雇用していない又は雇用主である高度専門職外国人の世帯年収が3,000万円以上の場合において、申請人以外に雇用している家事使用人の数が1人である旨を記載した文書 1通
⑧ 雇用主である高度専門職外国人が日常生活において使用する言語について会話力を有することを明らかにする資料 1通
雇用契約書(写し)及び労働条件を理解したことを証する文書 1通
 ※厚生労働省作成のモデル雇用契約書を使用してください。
⑩ 雇用主である高度専門職外国人の所属機関の金融商品取引法第28条第2項に規定する第二種金融商品取引業、同条第3項に規定する投資助言・代理業又は同条第4項に規定する投資運用業に係る登録済通知書写し等 1通
⑪雇用主が上記⑩のいずれかの業務に従事することを説明する資料(参考様式) 1通 

※下記HP内の「世界に開かれた国際金融センターの実現に向けた措置に係る金融人材に関する参考様式(PDF)」

www.moj.go.jp

 

4.参考:特定活動告示2号、2号の2、2号の3(抜粋)

 別表第二に掲げる外国人に当該外国人が使用する言語により日常会話を行うことができる個人的使用人として雇用された十八歳以上の者が、月額二十万円以上の報酬を受けて、当該雇用した外国人の家事に従事する活動
二の二 申請人以外に家事使用人を雇用していない法別表第一の二の表の高度専門職の在留資格をもって在留する外国人(以下「高度専門職外国人」という。)(申請の時点において、当該高度専門職外国人が受ける報酬の年額と、その配偶者が受ける報酬の年額とを合算した額(以下「世帯年収」という。)が千万円以上であるものに限る。)に当該高度専門職外国人が使用する言語により日常会話を行うことができる個人的使用人として雇用された十八歳以上の者(当該高度専門職外国人と共に本邦に転居する場合にあっては、継続して一年以上その者に個人的使用人として雇用されている者、当該高度専門職外国人と共に本邦に転居しない場合にあっては、その者が本邦に転居するまで継続して一年以上その者に個人的使用人として雇用され、かつ、その者の転居後引き続きその者又はその者が本邦に転居する前に同居していた親族に個人的使用人として雇用されている者であって、当該高度専門職外国人の負担においてその者と共に本邦から出国(法第二十六条の規定により再入国許可を受けて出国する場合を除く。)することが予定されているものに限る。)が、月額二十万円以上の報酬を受けて、当該高度専門職外国人の家事に従事する活動

二の三 次のいずれにも該当する高度専門職外国人に当該高度専門職外国人が使用する言語により日常会話を行うことができる個人的使用人として雇用された十八歳以上の者が、月額二十万円以上の報酬を受けて、当該高度専門職外国人の家事に従事する活動
イ 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二十八条第二項に規定する第二種金融商品取引業、同条第三項に規定する投資助言・代理業又は同条第四項に規定する投資運用業に係る業務に従事していること。
 ロ 当該高度専門職外国人の世帯年収に係る次の区分に応じそれぞれ次に定める要件に該当すること。
(1)千万円以上三千万円未満申請人以外に家事使用人を雇用していないこと。
(2)三千万円以上申請人以外に家事使用人を雇用していない又は申請人以外に雇用している家事使用人の数が一人であること

 

5.最後に

 上記のとおり、高度専門職外国人が外国人の家事使用人を雇うには、3つの類型の家事使用人の在留資格があり、それぞれの要件や必要書類も複雑になっています。

 高度専門職外国人が外国人の家事使用人を雇う場合の在留資格については、入管法に詳しい行政書士に相談されることをお勧めします。